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2008年 04月 03日
散歩していたら、幼児が花を摘んでいた。
摘んでいた、というよりも、もいでいたといおうか。 彼女はひとり。 周りを見回しても、畑や田んぼや遠くの方に小さな神社が見えるだけで、彼女の知り合いらしき人間はいない。 「ひとり?」 話しかけた私に、驚くわけでもなく 「はい」 と、もいだ花をさしだした。 「おうちにかだってね」 さ行がまだあやしい彼女から、花を受け取る。 「ありがとう」 お礼を言うとにっこり笑って、また花をもぐ作業へと戻って行った。 そんな彼女を見るわけでもなく、ぼんやりとしていたら 「え?」 と言う彼女の声が聞こえた。 「え?」 私が言うと、花をもいでいた手を休めて、私の方へ寄って来た。 少し申し訳ないような顔をしている。 「あのね、やっぱり、かえちてくれる?」 さっき私にくれた、小さな白い花を見ている。 「いいよ」 返すと、まだ申し訳ない顔のまま言う。 「この花だないと飛べないんだって」 そして、花をもいでいた場所にまた戻って行った。 「誰が?」 小さな背中に話しかけた。 「との人」 この人、と言われても私には彼女しか見えない。 し、あんな小さな花。 彼女の様子を見続けていたら、彼女がすっくと立ち上がって空をあおいで、手をふった。 「ばいばーい」 彼女の視線を追って、私も空をあおいだ。 さっきの白い花が、すーっと飛んでいく。 青い空を背景に、白がどんどん小さくなっていった。 ずっと目で追ったけれど、そのうちに空と雲に溶けていってしまって、見えなくなった。 誰か、あれに乗っていたのだろうか。 そういわれれば、何か人影のようなものが。 「ねえ、誰が乗っていたの?」 顔を空から戻して、彼女の方に向けたけど、もういなかった。 「ばいばーい」 声だけ、残っていた。 #
by omokorocoro-w
| 2008-04-03 11:55
2008年 02月 16日
妹には彼氏といっしょに暮らしている友人がいる。
同じ会社に勤める友人だ。 その彼氏が、ある日小さな小さなみつあみをひと房持って帰ってきた、らしい。 「これ」 と言って開いた手の中に、小さい黒いものがのっていた、らしい。 はじめは何か分からなかった。 よく見ると、編まれている髪の毛だった。 「こんなもの、どうしたの」 妹の友人が尋ねると、彼はぽつぽつと話し出した。 彼は週に2日、仕事が終わってから専門学校に通っている。 授業が終わって、帰り支度をしていた彼の机の上に、小さい人がいた。 「ち、ちいさい」 彼が発した言葉の、その彼の吐いた息で、小さい人は少しふらついた。 「それくらい小さかったんだ」 彼は具体的な大きさは言わなかったけれど、その小さな小さなみつあみを見れば、だいたいの小ささが妹の友人にも分かった。 あの子が見た、会社のファックスから出てきた小さい人と同じかしら。 考えながら、彼の話を聞いた。 「小さい人は話してないと思うんだ。口が開いてなかったし、声を聞いてもないし」 でも、彼には届いた、という。 小さい人の願いが。 「髪を切ってくれませんか?」 小さい人はそう願った、という。 「手がふるえたよ。なんせ、小さいんだもん。 耳をちょっと切っちゃった、なんていうサイズじゃあないんだから」 彼は慎重に慎重に、言われるまま、みつあみの片方を切り落とした。 切り落としたみつあみを、親指と人差し指でつまみ上げたら、もうそこには小さい人はいなかった。 「え?」 彼が吐いた息で、小さなみつあみが彼の指先から飛んでいった。 「30分くらいさがしたんだ。みつあみもその人も」 結局、見つかったのはみつあみだけだった。 「あげるよ」 そう言われて、そっと手のひらにのせられた小さなみつあみを妹の友人はじっと見つめた。 片方だけみつあみを残した、小さい人を想像しようとした。 なんだか切なくなってきて、やめた。 みつあみは、からっぽになった旅行用の化粧水のビンの中に入れた。 今まで彼がくれたものの中で一番、神秘的で意味の深いものであるような気がしたから。 #
by omokorocoro-w
| 2008-02-16 13:53
2008年 01月 22日
妹が勤める会社のファックス機の調子が、どうもよろしくないと思っていたら
小さい人がはさまっていた、という。 ウインウインと前にも後ろにも進んでいないような歯がゆい音がしたと思ったら、ぐりんっ、と ファックス機から吐き出されるように小さい人が出てきた、という。 その小さい人は、小さい犬を連れていた、という。 小さい人の膝まわりにまとわりついて、くんくんと鳴いていた、という。 コートを、確か、ワイン色のコートを着ていた。 髪は、みつあみ、2つにみつあみ。 毛糸の帽子、そうそう!耳あてつきの毛糸の帽子をかぶっていた。 妹が、言う。 でも、男か女かは分からんかった。 大きさは私が前に見た人とどうも、同じくらいのようだ。 同じ人なのか。別人か。 小さい犬を連れた小さい人は、ファックスから出てきた後、目をしばしばさせてほんの少し妹を見つめて、コートのポケットから小さなハンカチを出して、その小さな顔をふいた。 ハンカチをコートのポケットのしまうと、膝まわりにじゃれている小さな犬のあごをなでて、 それから去って行った。 どこに、どうやって去って行ったのか、思い出せない。 気がついたら、もういなかった。 ほんの少しだけど、確かに見つめ合ったのに、目と目を合わせていたのに、 小さい人の目がどんなだったのか、妹には思い出すことができなかった。 あるいは、私には聞き出すことができなかった。 #
by omokorocoro-w
| 2008-01-22 09:24
2007年 10月 17日
近所の神社の祭りに行った。
行ければ、毎年行く。 行ければ、家族で行く。 いい具合に酔っぱらって、わいわい言って、楽しむ。 たこ焼き、チヂミ、ホルモン焼き、たい焼き、からあげにイカ焼き。 ダーツ、射的、輪投げ、くじ引き、金魚すくい。 わんさか食べて、わんさか遊んで、帰り道。 祭りの夜店の本筋から、少し離れているところに出ているからあげの屋台が、父さんの目にとまる。屋台の裏で、若い男の子が包丁で生の鶏肉を切っている。 客の姿はない。みんな、本筋にあるからあげ屋で買うのだ。本筋にだって、5,6軒はある。 「冷凍じゃ、ないねんな。場所が良かったらな」 通り過ぎながら、父さんは言う。 「買ってこようかな」 すっかり通り過ぎてから、父さんが言う。 「からあげ、食べたやん!」 ふらふらと父さんの周りを歩いていた母さんが、大きな声で言う。 「同情やな」 私が言うと、父さんはかわいらしくうなずく。 「うん」 お腹はもういっぱいのはず。なのに、 「帰って、このからあげでもう1本、ビール飲むねん!」 手にしたからあげを掲げて、声高々に意思表明。 しかし、この意思表明からほんの100メートルほどで、父さんの気が変わる。 気が変わる、というより、気がつく、か。 「母さん、食べや、このからあげ」 「お父さんが買ってんやろ?自分の行動には責任を持たなあかんで」 「ぬお。夫の尻拭いをするのが、妻の勤めやろ」 「私を普通の妻と思うなよ。私は普通の妻じゃあないぞ!」 「普通ってなんだね。普通って!」 ふらふらと2人で先を歩いていく。 しょうもなくも、いとおしい言い合いをしながら。 今年の祭りも、もう終わってしまった。 また来年。 #
by omokorocoro-w
| 2007-10-17 11:34
2007年 08月 10日
朝起きると、ベランダに自転車が置いてあった。
2回のベランダに、である。 赤い自転車だった。 誰も心当たりがないと言う。 夜寝る前にはなかった。 寝る前にクーラーをつけるのに、窓を閉める時、ベランダを一応点検というか、見ていたから。 狭いベランダなのだ。洗濯物を干すためだけの。 人はすれ違えない。 だから、その赤い自転車もちょっと窮屈そうに、そこにあった。 仕方がないから置いておいた。 運ぶのも大変だし、第一みんな仕事だし。 洗濯物を干すのに邪魔だったけど、自転車がいるところだけ避けて干した。 おかげで干す場所が足りなくなったので、自転車の上にも干した。 タオルや父さんのパンツ、私のTシャツ、母さんの靴下。 夕方帰って来ると、いなくなっていた。 タオルや父さんのパンツ、私のTシャツも母さんの靴下も、いっしょにいなくなっていた。 赤い自転車。 ちょっと休みたかったんだろうか。 走り疲れて、どこでもいいから止まりたかったんだろうか。 古くて、狭いベランダでも。 そんなことなら、もっといいものを干せばよかった。 麦わら帽子とか、浴衣とか、お茶、すいか、うちわ。 あ、花火もいいな。 自転車にだって、花火をいっしょにする友人くらいいるだろうし。 なんだって、しようと思えば出来ないことはなさそうだし。 またどこかで休むこともあるだろうか。 父さんのパンツはどうしただろうか。 #
by omokorocoro-w
| 2007-08-10 09:54
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